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日医科大 武蔵小杉病院

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彼女の口ぐせは、いつもこうだった。
『あやめちゃんの病院はね〜、ご飯も食べられるし、カレーも食べられるし、ドトールコーヒーもあるんだよ。先生がいっぱいなんだよ!』

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彼女は、2013年7月29日、我が家から近くのとても大きな総合病院で生まれた。一般的にいわれる、難産。
10人以上が掛り切りになった。
とても大変な出産であったことは、傍目から見ていた僕にもわかる。
始めは、助産師さんと研修の学生さんの2人だったが、彼女がなかなか出て来ないので、

医師の数が一時間という時間の中で、二桁にまで増えて行った。
そしてようやく生まれてくれた。

 

家内は出産の記憶がないと言う。彼女に会えたのも、この世に出てから、3時間後。

新生児蘇生を受けての、その上での彼女との対面。

 

そんな『彼女』とは、わが娘、長女、岡田あやめ。
大学病院が、かかりつけになってしまっている。

 

彼女には妹がいる。妹は、我が家から近くの、小さな小児科専門クリニックが、かかりつけ。

 

生まれからして、大きな違いのある2人姉妹。

 

だけれど、お互いに、自分自身のかかりつけ病院にプライドを持っているようだ。

 

彼女は、よく言っていた。『私の病院にはレストランもあるし、コーヒー飲める場所もあるし…』

とにかく総合病院を自慢していた。

 

妹は、『風邪ひいたら行く〜。シールもらえる〜』と、負けない自慢を自分が、かかりつけのクリニックに。

 

互いの『かかりつけ病院自慢』は、とても可愛らしい。
違いは他にもあった。

 

彼女は、特殊で敏感なアレルギー持ちだ。
昨年の初夏、その年初めての虫刺され。
僕が出張中の事だった。

 

生放送の仕事をしながらも、僕のスマホには家内からの着信。いくつも。
こんな事はめったない。
でも、仕事中だ。
局にまで電話が入っていた。
『娘さんが緊急入院したそうです。』
生放送終了後の、スタッフからの第一声に、僕はたじろいだ。

 

蜂窩織炎というものだったらしい。
妹のかかりつけクリニックにて診察してもらったら、急遽、そのまま日医科大武蔵小杉病院へと、緊急入院。

 

入院初日、彼女が生まれた、知っている総合病院でない、初めての大きな病院であったことから、

大きな不安が彼女を包んでいるだろうことは、容易に想像できた。

 

僕も知らない病院。
日医科大武蔵小杉病院。

 

行ったことのない病院…。
出張先から電話する。

 

電話口の彼女は、4歳と言えども、とても元気に振る舞っていることが分かった。

 

『お泊りしなきゃいけないの…。』
『おとうさん、早くても明後日になっちゃうけどいい?』

 

もう僕にはそれくらいしか言えない状況でもあった。

 

金曜日、朝の生放送を終えて、急いで湘南新宿ラインで大宮から武蔵小杉へ。
大人の僕でも、初めて訪れる病院には緊張していた。

 

自分が住んでいる街なのに、駅の出口、どこを使えばいいかも迷う。
駅から10分ほど歩いただろうか。
日医科大武蔵小杉病院のエントランスをくぐる。

一般面会時間外ではあるが、お父様ならば、どうぞ…と。

 

制服を着ている警備の方が面会バッヂを渡してくれると同時に、

『お嬢さんですか、心配ですね。早く行ってあげて下さい』と。なんだか、それまでの緊張感が和らぐ。

 

エレベーターまでの30メートルほど、真っ直ぐに歩いて行くが、

その間に車椅子何台かとすれ違った。みんな和かな会釈をしてくれる。

車いすの患者さんも、それを押すナースも。

 

なんだ、この病院という施設にあるまじき明るい雰囲気、光。
この感覚は僕が4歳の時に原因不明の高熱で入院した

相模原の北里大学病院の雰囲気。その時の事が頭をよぎった。白石先生の名前を思い出した。

 

白石先生に憧れた4歳の僕だった。
白石先生に会いたくて、単なる風邪でも、

ワガママ言って北里大学病院へとクルマに乗せてもらい通院したっけ。
あの感覚が蘇ってくる。

 

エレベーターで小児病棟へ。
ナースステーションに行くと、誰もが『こんにちは〜』と。
明るい挨拶に返答する事だけで精一杯になったけれども、

それまでの自分の中にあった緊張を馬鹿馬鹿しく思いもした。

 

病室まで案内されると、寝ている彼女。
点滴のチューブに繋がれている右腕。
左腕は、包帯をしていても、3倍ほどに膨れ上がっていることがわかる。

 

彼女が目覚めたらなんと声をかけるか…。

スヤスヤ寝ている彼女の横でそんな事を考える時間、5分くらいだったかもしれない。

彼女が目を覚ますと、第一声は、『お父さん』ではなく…『田辺先生は?』

 

僕にはさっぱりわからない。
ベッドには主治医は佐野先生と記入されている。誰なんだ、田辺先生とは??


彼女に田辺先生の事をきいてみると、声が変わった。
かなり可愛らしい声で照れが入りながら
『あやめちゃんの好きな人』


いや〜、参った。蜂窩織炎どころでなく、4歳児が恋の病にかかっている。

 

僕の頭にも蜂窩織炎よりも、娘の心を奪ったオトコに興味津々。
彼女からのオーダーは、田辺先生に手紙を書きたいから、折り紙を持って来てほしいと。拍子抜け。

 

意外にも彼女は日医科大武蔵小杉病院での時間をエンジョイしている。


ナースにも聞き込み。もう、このタナベなるオトコとの対面に備えている僕がいる。

『もうすぐ田辺先生来ますよ〜』
病床でお会いした。

 

いや〜、なんとイイ男なんだ。
優しい表情に、子供の目線ですべて説明。こりゃ〜、心奪われるのも仕方ない。


勝手ながら男親の感覚で、『参りました!』となった。
二週間ほどの入院生活を経て、退院の日。


ナースに田辺先生の下のお名前を聞く彼女。もう、モジモジモジモジ。


主治医の佐野先生がいらっしゃると、
彼女は、『田辺先生は…いないの?』
ナースが言う。『今日は外来をされてるから、こっちこれないかな〜』

 

すると主治医の佐野先生、『僕、外来を、田辺先生と代わってきますから、田辺先生、来てくれるようにしますね』

 

なんて、心を大切にしてくれちゃう先生や、ナース達ばかりなんだ。この病院。

 

その後も蜂窩織炎が再発すると、日医科大武蔵小杉病院へ。

 

外来では右田先生にお世話になり、採血があると、泣きそうな彼女に右田先生が言った。

『あやめちゃん、お注射は、田辺先生がやってくれるようにするからね!頑張れ〜だよ、田辺先生に強いとこ見せようね』

 

これって、カルテにあやめが、田辺先生を好きってことが書いてあるんじゃないのか!(笑)

 

細かな配慮。処置室に彼女だけが入ると、

病棟からわざわざ田辺先生がやってきて、ナースも4人ほど。

泣き声が聞こえてくる前に、

 

『フレーフレーあやめちゃん!フレーフレーあやめちゃん!!』の大合唱が外来診察室の空間に響いてきた。

『あやめちゃんー、がーんばれ!あやめちゃんー、がーんばれ!!』

ナース4人の大合唱が続く。

素敵なナースさん達ばかりだ。

 

親として、目頭熱くなる思いだった。
泣くこともあるけれど、彼女はもう、

田辺先生、そして日医科大武蔵小杉病院のファンである。何を隠そう、僕もだ。

 

病院のエントランスをくぐる。挨拶が交わされる。

明るい気持ちになれる、そんな環境は、この病院に携わる一人一人が作り上げているものなんだと感じる。


彼女は自慢する。

日医科大武蔵小杉病院を知ってからは
『あやめちゃんの病院はね〜、好きな人がいるんだよ。田辺先生がいるんだよ、髪がないけど、右田先生がいるんだよ。みんなフレーフレーって応援してくれるんだよ。コンビニもあるんだよ。プリキュアのお菓子もあるんだよ。田辺先生と結婚するの』


その自慢に僕は『いいよ〜』と答えるのみ。妹も、憧れと共に聞いているみたい。

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この病院の近くに住んでいる誇り。安心。嬉しさ。彼女には、今、この病院で経験する人との心の繋がりを、しっかりと掴んで欲しいと思う。

 

もうすぐ運動会。その練習で、ちょっとした擦り傷でも、彼女は言う。『田辺先生に会いに行きたいの』
彼女の病院自慢は、どうやら幼稚園でもらしい

幼稚園の先生にも言われる。『あやめちゃんは、恋の病なんですね!』

どうやらこれは、日医科大武蔵小杉病院でしか治せないみたいだ。

 

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そんな病院に、また、昨夜からお世話になっている。

心配はない。

なぜなら、日医科大武蔵小杉病院だからだ。


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